![51EkiZ-yEKL._SL160_AA115_[1]](https://blog-imgs-37-origin.fc2.com/c/l/i/climber319/20100323203648e39.jpg)
薄汚れた縞の着物に黒の手甲脚絆、草鞋ばきであった。
腰に鉄環と鉄鐺で錆朱色の鞘を固めた頑丈な拵えの長脇差を落とし、右肩に古ぼけた振分け荷物を掛けている。
かなり早い足の運びで歩く。
病人のように青白い顔で、両頬が削いだみたいにこけ落ちている。
月代がのびて、無精髭も目立っていた。男っぽく、彫りの深い顔立ちであった。
暗く沈みきっているといった印象だが、実は表情というものがまったくないのである。
鋭く冷たい目も、感情が死んでいる。
その虚無的な翳りが、無気味でさえあった。何を考えているのか分からない男の、恐ろしさかもしれない。
年は三十一、二であった。
左の頬に、小さな傷跡がある。刀傷の跡で、古いものだった。その両端が、目立たない程度に引き攣っている。
渡世人は、楊枝をくわえていた。長さ五寸、約十五センチの手製の竹の楊枝である。
両端が、鋭く尖らせてあった。
当時そのくらいの長さの楊枝は珍しくなかったが、それを常にくわえているというところが変わっていた。
少し前、渡世人は楊枝を唇の左端に寄せて、そこから息を吐き出した。すると楊枝が振動し、笛のように鳴った。
その音は、冬の夕暮れに吹き抜ける木枯しに似て、ひどくもの哀しかった。
渡世人は上州新田郡三日月村生まれの、無宿紋次郎である。通称として、木枯し紋次郎と言われている。
木枯しとは、楊枝を吹き鳴らすその音から、誰かが言い出したことらしい。
バースデープレゼント
私の誕生日に、大好きな「木枯し紋次郎」の記事を掲載していただき、ありがとうございます。
偶然とはいえ、プレゼントをいただいたようで、とてもうれしいです。
おめでとうございます。
そうでしたかお誕生日でしたか。
何回目かは聞かないことにしますね^^
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